C&S ニュースレター
C&S ニュースレター No.45
- Date2023/03/29 16:04
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* 均等侵害における「変更容易性の判断時点」及び「意識的除外の有無」に対する大法院判決の紹介
* 改正商標法及びデザイン保護法の主な内容及び解説
* 新規性喪失の例外規定の適用の根拠となった先行デザインに基づく自由実施抗弁の可否
* 2022年度の韓国における特許、商標、デザイン出願動向
* 韓国、3年連続国際特許出願(PCT)世界4位!国際商標出願世界11位!
* C&S ニュース
- 均等侵害における「変更容易性の判断時点」及び「意識的除外の有無」に対する大法院判決の紹介 _弁理士 ファン・ウテク
最近、韓国大法院(2023.2.2. 宣告、2022フ10210判決)は、今まで両当事者の間で争いが多かった均等侵害において、変更容易性の判断時点及び意識的除外の有無に対する判断基準を明確に提示しました。
[均等侵害における変更容易性の判断時点]
特許発明と対比される確認対象発明が特許発明の権利範囲に属するとするためには、特許発明の特許請求の範囲に記載された各構成要素及びその構成要素間の有機的結合関係が確認対象発明にそのまま含まれていなければならない。
一方、特許の保護範囲が特許請求の範囲に記載されている事項によって定められるにもかかわらず(特許法第97条)、特許請求の範囲の構成要素と侵害対象製品等の対応構成とが文言的に同一ではなくても互いに均等な関係にあるものと評価される場合、これを保護範囲に属するものと見なして侵害を認めることは、出願人が特許請求の範囲を記載する上で文言上の限界があるはずであるが、これは、軽微な変更による特許権侵害回避の試みを放置すると、特許権を実質的に保護できなくなるためである。上記のような均等侵害認定の趣旨を考慮すると、特許発明の出願以後から侵害時までの間に公知となった資料であっても、構成変更の容易性の判断においてこれを参酌できると見なすことが妥当である。
このような制度の趣旨を考慮すると、権利範囲確認審判では、確認対象発明に特許発明の特許請求の範囲に記載された構成のうち変更された部分がある場合、審決時を基準として特許発明の出願以後に公知となった資料まで参酌し、そのような変更が通常の技術者であれば誰でも容易に想到し得る程度のものであるかを判断できると見なすことが妥当である。
[出願過程での特許請求の範囲の削減と意識的除外の有無]
特許発明の出願過程でどのような構成が特許請求の範囲から意識的に除外されたものかは、明細書だけでなく、出願から特許されるまでの特許庁審査官が提示した見解及び出願人が出願過程で提出した補正書と意見書等に示された出願人の意図、補正の理由等を参酌して判断すべきである。
よって、出願過程で特許請求の範囲の減縮がなされたという事情だけで、減縮前の構成と減縮後の構成とを比較し、その間に存在する全ての構成が特許請求の範囲から意識的に除外されたと断定するのではなく、拒絶理由通知に提示された先行技術を回避するための意図として、その先行技術に現れた構成を排除する減縮を行った場合などのように、補正の理由を含め、出願過程において現れた様々な事情を総合したみた時、出願人が或る構成を権利範囲から除外しようとする意思が存在すると見なすことができる場合に、これを認めることができる。
- 改正商標法及びデザイン保護法の主な内容及び解説 _弁護士 / 弁理士 イ・ジョンウォン
1. 改正商標法及びデザイン保護法の施行
最近、2022年に改正された商標法(法律第18817号、2023.2.4.施行)及びデザイン保護法(法律第18886号)の改正内容がすべて施行されるにつれて、商標及びデザイン制度に関連した有意味な変化がありました。以下では、改正法の主な内容について説明致します。
2. 改正
(1) 商標使用行為の拡大(2022. 8. 4. 施行)
オンライン上で商標を表示したり、オンラインを通じて一方的にダウンロードする方式の様々なデジタル商品が流通されていますが、旧商標法では、商標の使用行為を「商品又は商品の包装に商標を表示したものを譲渡又は引き渡しするか、或いは譲渡又は引き渡しする目的で展示・輸出又は輸入する行為」と規定しており、オンラインでの商標の使用がこれに包摂され得るものなのか不明であるという問題点がありました。
よって、改正商標法では、既存の伝統的類型に加えて、オンライン上及びデジタル商品に対する商標表示行為を商標の使用行為に該当するものと明文化しました(商標法第2条第1項11号ナ目)。これにより、商標不使用取消審判及び許可なしに他人の商標を使用することによる損害賠償請求訴訟などにおいて商標使用の認定範囲が拡大し、権利者に対する保護が強化されました。
(2) 再審査請求制度の導入(2023. 2. 4. 施行)
旧商標法では、出願人が商標登録拒絶決定を受ける場合、拒絶決定不服審判請求拒絶決定不服審判請求以外には別途の対応方法がありませんでした。しかし、改正商標法では、商標の再審査請求制度を導入し、商標登録拒絶決定に対して再審査を請求することが可能になりました(商標法第55条の2)。商標登録拒絶決定を受けた者は、その決定謄本を送達された日から3ヶ月(第17条第1項に基づき第116条による期間が延長された場合にはその延長期間)以内に拒絶決定された指定商品又は商標を補正し、当該商標の登録出願に関する再審査を請求することができます。但し、再審査を請求する際、既に再審査による拒絶決定があるか又は拒絶決定不服審判請求がある場合には、再審査を請求することができません。なお、再審査を請求する場合、拒絶決定不服審判を請求した場合と比較すると、1個類ごとに22万ウォンの手数料の負担が減少します。
(3) 部分拒絶制度の導入(2023. 2. 4. 施行)
旧商標法では、商標登録出願時に一部の指定商品にのみ拒絶理由があっても、出願人が拒絶理由を解消しなかった場合には、拒絶理由のない商品まで全て拒否決定されました。改正商標法では、商標登録出願書に記載された指定商品の一部に対してのみ拒絶理由がある場合、残りの指定商品は商標登録を受けられるようにする部分拒絶制度を導入しました(商標法第57条、第68条、第87条)。
本制度の適用対象は、施行日である2023. 2. 4.以降に出願されたものとします。また、既存の制度下で拒絶決定不服審判を請求すると、全指定商品類に対して審判請求料が賦課されますが、改正後には、拒絶理由のある指定商品類に対してのみ審判請求料を納付すればよくなります。したがって、出願人の立場からは、一部の指定商品が拒絶された場合及び不服審判を請求する場合の両方において、対応に関する手数料を削減できる効果があるものと期待されています。
3. 改正デザイン保護法の内容
2022. 6. 10. 改正及び施行されたデザイン保護法では、デザイン権侵害罪を権利者の告訴があった場合にのみ公訴を提起できる親告罪から、被害者の明示した意思に反して公訴を提起できない反意思不罰罪に変更されました(デザイン保護法第220条第2項)。親告罪の場合、被害者が犯人を知った日から6ヶ月が経過した後には告訴をすることができないため、侵害事実を確認した後、侵害を主張するための検討過程で期限を超える可能性があるという問題がありました(刑事訴訟法第230条)。これにより、侵害事実が明確でないにもかかわらず、告訴期限を遵守するために告訴が乱発するという問題が発生してきました。また、捜査機関の立場では、権利者の告訴がないと、捜査を進めることができないため、権利者の告訴意思を確認する前には積極的に捜査を進めにくい点があり、権利者保護の観点からも実効性のある手段にはならないという問題点も提起されました。
そこで、改正デザイン保護法では、デザイン権侵害罪を、告訴がなくても捜査の開始及び進行が可能な反意思不罰罪と規定することにより、権利者の保護をさらに強化しました。改正デザイン保護法の内容は、法令の施行以後に発生した又は継続している犯行に適用されます(各附則第1、2条)。
4. 結び
本改正商標法及びデザイン保護法の両方が施行されるにつれて、権利獲得及び権利行使に利便性をもたらす制度が多く導入されました。特に、改正商標法における部分拒絶制度により、出願人は非常に簡単な拒絶理由のせいで出願全体が拒絶されることがなくなり、登録可能な範囲内で商標権を確保することができるようになり、再審査請求制度を通じて拒絶不服審判請求に代わり、比較的簡単な手続きにより拒絶決定に対応できるようになりました。権利者の便宜を図る様々な制度が導入されることで、韓国内の知的財産権の活用がさらに盛んになることを期待します。
- 新規性喪失の例外規定の適用の根拠となった先行デザインに基づく自由実施抗弁の可否 (大法院2023. 2. 23. 宣告2021フ10473権利範囲確認(デザイン)) _弁護士 / 弁理士 イ・ジョンウォン
1. 概要
最近、大法院では、公知デザインが新規性喪失の例外規定に該当する場合には、新規性喪失の例外規定の適用の根拠となった先行デザインに基づいて自由実施デザインの主張を開陳することができないと判示しました。これは、特許法院の立場とは反対になるものです。以下では、各法院の立場及び根拠を通じて新規性喪失の例外及び自由実施デザインの意味について説明致します。
2. 特許法院の立場(2022ホ5412)
原告が被告に対して「確認対象デザインは、この事件の登録デザインの権利範囲に属する」と主張しつつ積極的権利範囲確認審判を請求しましたが、特許審判院が審判請求を棄却する審決をしたところ、上記審決の取消を請求しました。
その後、特許法院では、「先行デザイン2が適用された製品について写真が撮影され、この事件の登録デザインの出願前に、第三者にファイル形式で転送されましたが、これは、特別な事情がない限り公知のデザインに該当する」と見なし、被告の先行デザイン2に基づく自由実施デザインの抗弁を許容し、確認対象デザインが登録デザインの権利範囲に属さないと判断しました。
特許法院は、そのような結論の根拠として、①新規性喪失の例外規定は「デザイン登録の要件」の判断において、公知デザインが公知されたものと見なさないと明示している点、②新規性喪失の例外規定は、登録可否の判断時に「第三者の権益を損なわない範囲内で」考慮すべきである点、③自由実施デザインの法理は、対比の対象を公知デザインと確認対象デザインとしているだけで、「登録デザインとの関係」を考慮するものではない点、④取引過程で目的に反して不正にデザインが公開される場合、不正競争防止及び営業秘密保護に関する法律等により保護されることができる点、などを挙げています。
3. 大法院の立場(2021フ10473)
大法院は同様に、この事件の争点が、「新規性喪失の例外規定の適用の根拠となった先行デザインに基づいて、自由実施デザインの主張が可能か否かに関するもの」と見なし、「新規性喪失の例外規定の適用の根拠となった公知デザイン又はそれらの結合により容易に実施できるデザインが誰でも利用できる公共の領域にあることを前提とした自由実施デザインの主張は許与されない」と判断し、原審決を破棄・還送しました。
大法院は、これについて、①新規性喪失の例外を認める立法的決断を前提に、第三者とデザイン登録を受けることができる権利を有する者との間の利益均衡を図るために、新規性喪失の例外規定の適用を受けるために遵守すべき時期的・手続的要件を定めており、新規性喪失の例外規定の適用を受けたとしても、出願日自体が遡及されないものとした点、②確認対象デザインを公知デザインと対比する自由実施デザインの法理は、公共の領域にあるデザインは誰でも利用できるものでなければならないという考えに基づいているが、新規性喪失の例外規定の適用根拠となった公知デザインが公共の領域にあると断定できない点、③公知デザインに対して特別な創作的貢献をしていない第三者に無償の実施権限が付与されることで、第三者に対する保護を登録デザイン権者の権利に優先することになる不合理な結果をもたらし得る点、などを根拠として挙げました。
4. 結び
特許法院の判決後、新規性喪失の例外及び自由実施デザインの意味の解釈について多くの議論がありました。しかし、今回の大法院の判決によって、デザイン登録を受けることができる者が新規性喪失の例外によってデザイン登録を受けた場合、その根拠となる公知デザインは、もはや自由実施の領域にあるものと言えないという原則が確立されたものと見なすことができます。
判例上、認められていた自由実施の法理が明文化されて認められている公知例外主張に優先して適用されることは、下手をすると、権利者の権利を過度に制約する不合理な結論を生む恐れもあります。このことから、大法院の判断は、権利者の権利保護に積極的な立場と明確な基準を確立したという点で非常に望ましいと思われます。
- 2022年度の韓国における特許、商標、デザイン出願動向
韓国特許庁は、暫定的な2022年度の韓国における特許、商標、デザイン出願動向を発表した。
世界的な物価上昇による景気低迷の影響により、2022年の韓国特許出願は、前年水準を維持したが、商標とデザイン出願は大幅に減少したことが明らかになった。
まず、特許出願は前年水準の237千件である。
技術分野別の内国人特許出願を見ると、半導体(△18.3%)、電子商取引(△7.5%)、電子(デジタル)通信(△5.8%)など、先端技術分野を中心に出願が増加し、土木工学(▽17.1) %)及びマスクなどのその他の消費財(▽16.1%)分野は減少した。特に、内国人の先端技術分野に関する出願の増加は、米・中の技術覇権競争の大きな枠組みの下で韓国企業が自ら半導体・電子(デジタル)・通信など、先端・主力産業分野のサプライチェーンを確保するための戦略的知識財産経営を行った結果と思われる。
一方、2022年の国際特許出願(PCT出願)」は、前年比6.8%増加した合計22千件であって、これは、5年間(2018~2022)の平均増加率(6.6%)を上回ることが明らかになった。特に中小企業の場合、韓国内の特許出願は前年水準であるものの、景気低迷にも萎縮せず、技術開発による海外市場への進出に邁進するための国際特許出願が13%増加したことが分かる。
2022年の韓国に特許出願した国家別前年比の増減現況を見ると、米国(△14%)、ヨーロッパ(△3.9%)が増加したのに対し、中国(▽0.1%)、日本(▽2.2%)は減少したことが分かる。特に、先端技術を確保するために国家間で熾烈な競争が行われている状況を考慮して、米国は半導体及び先端技術分野への出願を大幅に増加させているものと見られる。次に、商標出願は前年比8%減少した325千件である。
内国人の商標出願は、今までに過剰な商標出願が行われた状況が反映され、前年比10%減少した290千件であり、国際出願は13%増加した35千件である。最後に、デザイン出願は前年比12%減少した60千件である。内国人のデザイン出願は、前年比12%減少した57千件、国際出願は7%減少した3千件である。
原文出所:韓国特許庁の報道資料など参照(2023-01-30)
- 韓国、3年連続国際特許出願(PCT)世界4位! 国際商標出願世界11位!
2022年、世界知的財産機関(WIPO)が発表した国際特許出願(PCT)件数は、サムスン電子、LG電子などを中心に前年比6.8%増加した22千件であり、3年連続で世界4位を占めた。
特に、韓国の前年比の国際特許出願(PCT)の増加率は、複合経済危機による困難にもかかわらず、主要上位10カ国のうち最も高いこと(6.2%)が明らかになった。米国は、前年比0.6%減少し、中国、日本、ドイツはそれぞれ0.6%、0.1%、1.5%増加に留まった。
2022年、全世界の国際特許出願(PCT)は278千件と前年比0.3%増加し、中国は70千件を出願して4年連続で世界1位を占めた。国際特許出願の上位10社のうち、韓国は、サムスン電子(2位)、LG電子(9位)の2社が含まれ、国際特許出願強国であることが確認された。
一方、2022年の全世界国際商標出願(マドリード出願)件数は、約69千件と前年比6.1%減少したが(2009年以来、最大の下落)、 韓国企業の出願はむしろ増加している。
韓国の2022年国際商標出願件数は2千件と全世界11位の規模であるが、その増加率は2019年9%、2020年13%、2021年24%、2022年2.1%と、全世界国際商標出願の増加率に比べて非常に高いといえる。
原文出所:韓国特許庁の報道資料(2023-03-02)
C&S ニュース
- 54周年創立記念日イベント(2023. 02. 24)
特許法人C&Sは、去る2月24日、創立54周年を迎えました!
今回は、従業員みんなで創立記念日を祝う時間を設け、長期勤続者(30周年2名、20周年1名、10周年16名)の表彰式及び昇進者の任命式を行ったり、最後には抽選イベントを実施するなど、楽しいひと時を過ごしました。
- 弁理士増員のお知らせ
特許法人C&Sでは、電子及び機械分野の弁理士を新たに迎え、業務力量をさらに強化致しました。今後も有能な人材確保に積極的に取り組み、これまで以上に上質なサービスをご提供できますよう努力致します。
氏名 |
所属 |
経歴 |
ヨ・ジョンミン |
機電融合部 |
第54回弁理士試験合格 漢陽大学 電気工学部卒業 特許法人フレンズ勤務 特許法人KBK勤務 淑明女子大学 産学協力団勤務 |
ジョン・ユジン |
機電融合部 |
第55回弁理士試験合格 ソウル大学 電気情報工学部卒業 特許法人MAPS勤務 |
ヤン・ヒテ |
電子1部 |
第57回弁理士試験合格 高麗大学 化工生命工学科卒業 Yoon & Lee特許法人勤務 |
ノ・ビョンミン |
機械部 |
第57回弁理士試験合格 釜山大学 バイオ産業機械工学科卒業 CHUNG-UN特許法人勤務 特許法人(有限) KBK勤務 |
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